今回はピアノの初見能力に必要なものと教室での取り組みについてお話いたします。
初見の意味は、本来は楽譜を見てすぐにすべての音をピアノで鳴らせることを言いますので、両手ですぐに弾けることを意味します。ここでは12歳以降楽しくピアノを弾いていけるために必要な読譜能力という意味で使っています。
初見能力を身につける為には
・絶対音感を身につけ、ブラインドタッチで弾けるようにする
鳴らした音が正しいのかわからないと、楽譜を見て、そして指を見てという動作が必要になり、そのうち楽譜のどこを弾いてるのか見失ったりします。絶対音感があると指は見ないでも正しく弾ける感覚があるので、ほぼブラインドタッチで楽譜だけを見ながら弾き進めることができます。逆にブラインドタッチを多くすることで絶対音を耳で受け取る機会が増え音感が高まります。教室では早い段階でブラインドタッチの経験を積みます。
・左手の音も聞こえるようにする
上と同じ理由で、左手の音を右手と同時に聞けなければ、正しく弾けているかいちいち確認する必要があります。この技術を養うために、教室では「ポリフォニック」(左手も右手も対等な役割のあるという意味です)な取り組みを行っています。
・調性感覚を身につける
ハ長調やト長調など♯や♭の少ないものはできても、3つ以上になるとつまずいてしまうことがあります。調性感覚を養う教材も増えてきています。教室ではバイエル相当の教材に黒鍵を多く扱うものを取り入れています。
そして、ここのところテクニックの課題に移調を含めることを始めました。ハノン1番から10番までかなり慣れて弾ける子供たちはどんどん移調してもらっています。
まだ♯、♭2個ずつですが、徐々に増やしていき調性の変化に慣れて♯♭3つ以上になると生じる壁を作らないようにしてゆきたいと思います。テクニックの課題は積極的にできる生徒が少ないので、時間のある時にゲームやスタンプラリーなど取り入れて技術を養っていきたいと思います。
・運指(指使い)がスムーズである
ブラインドタッチで弾ける余裕ができると、指番号にも反応できることになります。指番号をおろそかにした練習を続けてしまうと常識的な運指感覚をもてず、初見の段階ではもちろんのこと、音楽的表現をするときにもストレスがかかります。ここでは詳しく説明しきれませんので改めて別の機会を設けたいと思います。
・多くの曲を弾きこなす
練習不足により楽譜を見て弾けるようになるまでの期間が長過ぎると、楽譜からの情報を自然に演奏に反映させる動作がなかなか上達いたしません。
慢性的な練習不足を続けていると・・・・
○絶対音感取得
○ブラインドタッチ
○音楽のフレーズを記憶する力
○テクニック
など総合的な能力下げる結果となり、非常にもったいないことになります。もちろん毎日練習することは子供にとって大変な努力が 必要になると思います
この教室の55分のレッスンを通し、生徒たちに日常生活の中でも練習習慣が身に付くように様々なアプローチ方法を取り入れています。
今は練習日数を先生と競う練習カレンダーやテクニックの課題を応援するための50コマシート、希望者には練習時間に応援メッセージをメールで送る、などのサポートを行っています。逆に生徒さんから練習ができたら報告してもらうなどのコミュニケーションも行っています。時にはスカイプで応援することもありました。あくまでも希望者のみですし、基本的には生徒一人一人にストレスのないペースが一番だと思います。
・テクニックを高める
アルペジオ、スケール、トレモロ、3度進行、半音進行、連打音など頻繁に出てくるテクニックの手法が身についていないと、楽譜上に出てきた時に技術的にハードルが高くなります。指先の感覚の経験値が乏しいと、一口で飲み込める音数が少なくなってしまいます。音数が多い曲の後、少ない曲の初見はやりやすく感じます。知らない山道の下りカーブの連続を下りるのと似ているかもしれません。カーブ経験が少ないとなんども必要以上にブレーキを踏むことになります。
スケール・ハノンと順調に習得している状態ですが、アルペジオ、トレモロ、3度進行、半音進行、連打などはバイエル相当の教材に出てきた時に取り組んでいる程度です。もともとテクニックの課題は教室では不人気で、どうやったら楽しく習得できるかと考えております。
・音楽的記憶力を高める
楽譜を読みながらそこに記された小節で発生する左右の動きを理解し、瞬時にその情報を指先に移行しながら、さらに次の小節を読むテクニックを養うために、『音を記憶する力』が必要です。教室では聴音で次第に長いフレーズを覚えられるようにしてゆきます。そうすることで記憶できる音数が増えていきます。
・リズムを正確にとれるようにする
リズムや音価を正確に取る習慣は初級者の最初のかべの一つです。教室ではポピュラー音楽を発表会で楽しみながら用意しますが、この時こそ日頃のリズムカードの習得を生かして実践に移していきます。
この教室に通われる生徒さんの多くは4年生くらいから塾通いなどが始まり忙しくなるようです。
テクニックを含め、12歳ごろにかなりの力を身につけるためには理想としては3・4年生までにある程度の課題をマスターしていることが大切になります。また、5歳までにピークを迎え、7歳には減衰していく「絶対音感」取得のためにも、教室への入門時期はもっと早くてもいいのではないかと思うこともあります。3歳の場合など30分で和声、うた、リズム、聴音のみをピアノを使いながら行う少人数制クラスなども有効なのかもしれません。少人数制で協調してレッスンをしていくことに慣れると、その後の55分の本レッスンもスムーズに軌道に乗れるかもしれません。
新しく始めていることは、先ほどお話ししたハノンの移調と実は私が従来思っていたよりも少し早目の進度を視野に入れることなのです。子供たちに無理のないように、楽しいと思いながら多くを習得できるようにと思っています。コンクール入賞者、有名音楽大学へ進んでいく人はほとんど別次元に練習量が多いものです。発表会で3曲ずつ演奏しておりますが、専門的にレッスンする人たちの多くは、テクニック、ポリフォニー、練習曲(チェルニーやクラマーなど)、演奏曲と日常の練習の中で少なくても4項目並行して宿題をこなしています。よく動く指、ポリフォニックな耳、経験値を専門家ほどではなくても習得し、音楽を心から楽しめる感性が身に付くように、いつも楽しいレッスンになるように心がけています。次回は、音楽を楽しむスキルの一つ、『耳コピ能力』を養うために行っている最近のレッスンについてご紹介したいと思います。